ポラリスの向こう

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立ち尽くす

水中で「立ち尽くす」という表現があっているのか分からないが、つまりは立ち尽くすかのようにその光景の前で動けなくなってしまったのだ

 

水中ガイドという仕事を、忘れる程であった

 

自分が目にしている風景が間違いであることを祈り、気を取り戻して少し泳ぎまわってみた

 

しかし、私が知っている景色を見つけることは出来なかった

 

どこかに行ってしまった、のではなく、消えたしまったという事実は、私の目だけでは理解し難かった

 

本当は、私が見つけられていないだけで、どこかにまだ存在するのだと、心の底ではそう願っていたのだ

 

 

 

水中で泣いたのは初めてではなかった

 

しかし、水中ガイドを初めてからは初めてのことだった

 

目頭が熱くなるのと同時に、胸の鼓動は大きくなり、呼吸も早くなった

 

普段エア持ちのいい私の肺が、急激にタンクからのエアを求めているのが分かった

 

ダイブコンピューターは、深度5mを示していた

 

だが、水深30mを超える深度で自分を失わないようにかつ身体を落ち着かせるかのようにコントロールすることを努めたが、それでも私の身体は、エアをいつも以上に沢山消費し続けた

 

これ以上ここにいては危険だと判断した

 

自身のコントロールが出来ないガイドが、グループ全体をコントロール出来る訳がないのだ

 

2週間前とは打って変わった珊瑚のガレ山を、後にする決心をし、流れに沿って泳ぎ進めた

 

綺麗な景色より、簡単に脳裏に刻むことができたのは、それほど私にとってショックでありインパクトのある光景だったからだろう